やっさんの雑記

プログラミングでやってみたこととか

JRの乗車券の有効期間と途中下車

お久しぶりです。

今回は、途中下車制度を使ってJRでお得に旅行しようというお話です。
下のリンクの記事に触発されて書きました。
sow-te.hatenablog.com

途中下車ができる私鉄線は少ない、私鉄線は距離が短いので途中下車する必要性があまりない、などの理由により、この記事では基本的にJRに的を絞って説明します。

途中下車とは

基本的にJRの普通乗車券*1は、移動の途中、乗車券の有効期間内なら何回でも、後戻りしない限り、「1回改札の外に出たあとに改札内に入り、移動を続行する」ということができます。これを途中下車といいます。
改札の外に出てからどれだけ時間が経っていても、(たとえ数日間などの長時間であっても)乗車券の有効期間内であれば再び改札の中に入って移動を続行できます。
なお、「改札の外に出る」ということを、下車といいます。乗っている電車から降りただけでは下車にはなりません。
たまに「電車乗ってたらお腹すいたから途中下車して改札の中でそば食べてまた電車乗った」などと言う人がいますが、厳密には誤りです。

また、回数券や特急券、そしてSuicaPASMOICOCAなどのIC乗車券は、途中下車できません。
JRの普通乗車券であっても途中下車できない条件がいくつもあるのですが、それはあとで説明します。
途中下車できない乗車券の場合、切符に「下車前途無効」などと書いてあるので、それで判別することができます。

途中下車のしかた

基本的に自動改札に通せば途中下車の処理をしてくれます。
私は途中下車したときに押してもらえる駅名のはんこを押してほしく基本的に有人改札を使うのであまりわからないのですが、一部地域によっては自動改札が途中下車に対応していないこともあるようです。
途中下車しようとして切符が自動改札機に回収されてしまった場合は、駅員に言えば取り出してもらえるはずです。もしくは不安なら私のように有人改札を使うようにすることです。

途中下車を活用して得する例

東京から大阪の実家に帰省するのに、行きの途中で名古屋の親戚の家に立ち寄る用事ができたとします。

普通は新幹線を使うと思いますが、新幹線に乗るために必要な特急券は前述したように途中下車できないので、乗車券で途中下車制度を活用しようがしまいが、特急券はどのみち「東京→名古屋」「名古屋→新大阪」「新大阪→東京」の3枚を買う必要があります。
したがって、以下では新幹線の特急券は無視して、純粋に乗車券部分だけを比較します。

まず、途中下車ができないと仮定すると、おそらく次の3枚の乗車券を買うことになると思います。
最初の2枚が行きのぶんで、残りが帰りのぶんです。

東京都区内→名古屋市
片道6260円(学割5000円)
名古屋市内→大阪市
片道3350円(学割2680円)
大阪市内→東京都区内
片道8750円(学割7000円)

合計すると、18360円(学割14680円)です。

次に、途中下車制度を活用するとします。

東京都区内→大阪市内の乗車券は途中下車することができるかというと、できます。
そこで、東京都区内←→大阪市内の往復乗車券を買えばいいということがわかります。

東京都区内から大阪市内までの往復乗車券は、17500円(学割14000円)です。

また、http://sow-te.hatenablog.com/entry/2015/03/21/224223のように、大阪市内までの往復乗車券を買うのではなく、西明石駅まで伸ばした乗車券を使っても、同じことがいえます。

東京都区内から西明石駅までの往復割引乗車券は、17280円(学割13820円)です。

ということで、「東京都区内→名古屋市内」「名古屋市内→大阪市内」「大阪市内→東京都区内」の3枚の片道乗車券を購入する場合と、「東京都区内←→西明石駅」の1枚の往復割引乗車券を購入する場合とを比較して、1080円(学割使用だと860円)も安くすることができました。

安くなる理由

JRの運賃は、基本的に、乗車するキロ数にある賃率をかけたものを四捨五入するなどゴニョゴニョ加工して計算します。
ところが、この賃率は、キロ数が長くなればなるほど低くなるように設定されているので、同じキロ数乗車するなら、できるだけひとつづきの乗車券とするほうが安くなるわけです。

例えば本州のJR線の場合、300kmまで16.20円/km、301kmから600kmまで12.85円/km、601kmからは7.05円/kmとなっています。
300kmまでの賃率と601kmからの賃率を比較すると半額以下となっていて、往復割引や学割と比べてかなり強烈な割引になっていることがわかります。

安くならない例

ところが、途中下車制度を使っても安くならない例も存在します。

東京から川崎にある友人宅に立ち寄ってから、名古屋の実家に行く例を考えます。

東京駅から川崎駅までの運賃は片道310円です(これは学割は使えません)。
横浜市内(川崎駅は川崎市にありますが、JRの運賃計算上は横浜市内の駅に属します)から名古屋市内までの運賃は片道5620円(学割4490円)です。
したがって、途中下車制度を活用しない場合は、合計5930円(学割4800円)になります。

一方で、途中下車制度を活用しようとして、東京都区内から名古屋市内までの乗車券を買うと、前に出たように片道6260円(学割5000円)です。

330円(学割を使う場合は200円)も高くなってしまいました。どうしてでしょうか。

これは、東京・大阪では賃率の安い区間が設定されているということ、JRの運賃は階段状に上がっていくのである距離を超えると急に運賃がガクッと上がることがよくあること、特定都区市内制度により運賃計算に使う距離数を短くできたこと、が原因です(特定都区市内制度については後述します)。

このように、どこか目的地に向かう途中で別のどこかに立ち寄る必要があるというような場合に、途中下車制度を活用して安くなるかどうかはケース・バイ・ケースです。
しかし、途中下車を使って安くなる理由を考えればわかるように、乗車券のキロ数が300km程度までは効果が低く、400km程度を超えだすと積極的に活用したほうが良いということが一般に言えると思います。

途中下車するための条件

途中下車制度は「移動の途中でどこかに立ち寄る必要がある」というような比較的消極的な理由だけではなく、「移動の途中のあそこで見た景色が素晴らしかったから途中で降りて観光しよう」というような積極的な理由でももちろん利用することができます。

そうすると、例えばはるばる青森から観光に上京する人が、「品川まで行きたいんだけど、一旦上野で降りて動物園でパンダ見て、また乗って秋葉原で降りてオタク活動して、また乗って東京で降りて…」のようなこともしたくなってきますよね。
ところが、残念ながらこのようなことはできません。
途中下車はいつでも必ずできるのではなく、普通乗車券であっても、途中下車できない場合がいくつか定められています。

  • 100km以下の乗車券は、途中下車できません。
  • 東京・大阪・福岡・仙台・新潟の各大都市近郊区間内で完結する乗車券は、途中下車できません。
    • 東京近郊区間大阪近郊区間は、それぞれ首都圏・近畿圏のおおむね全域と考えていいと思います。
    • 福岡・仙台・新潟の各近郊区間は、私が地理に疎いせいであまりうまくパッと説明できないので、Wikipedia等を参照してください。
    • 東京・大阪の各近郊区間も、詳しい範囲はWikipedia等を参照してください。
    • 2014年4月1日に東京近郊区間が拡大されたことに伴って、いわきから松本まで450km近くあるのに途中下車できなくなるということは鉄道クラスタの間では話題になりました。
  • 乗車券の発駅もしくは着駅が、東京都区内や東京山手線内、○○市内となっているときは、その都区内・市内の駅
    • 発駅・着駅を東京都区内や東京山手線内、○○市内と表記するのは、特定都区市内制度と言います。
    • 各都区・市内の駅と、その中心駅から201km以上ある駅との間の運賃は、その中心駅からのキロ数で計算します。
      • 東京山手線内の駅であれば、東京駅から101km以上200km以下の駅との間であっても、東京駅からのキロ数で計算します。
    • 東京都区内は東京23区内、東京山手線内は山手線と中央快速線(神田~新宿)、中央・総武緩行線秋葉原~代々木)の駅が該当します。
    • ○○市内に該当する市は、横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・北九州・福岡・仙台・札幌です。
    • ○○市内になる駅は、ほぼその市の範囲に一致しますが、先ほど出てきた川崎駅の例のように一部例外があるので、Wikipedia等で確認することをおすすめします。
    • 特定都区市内発着の乗車券には、「券面表示の都区内(市内)下車前途無効」などと書いてあると思います。
    • 青森から上京した人が~~~の例で上野駅などで途中下車できないのは、これが理由です。

なお、新幹線は基本的に大都市近郊区間には含まれない(例外として、東海道新幹線の米原~新大阪と山陽新幹線西明石~相生は大阪近郊区間に含まれます)ので、例えば東京から熱海に行くのに小田原で一旦下車したい、というような場合には、在来線経由ではなく新幹線経由を指定するといいです。
新幹線経由を指定していても、新幹線駅に限らず、平行する在来線の各駅で途中下車することができます。*2

乗車券の有効期間

冒頭にも書きましたが、乗車券の経路の途中で一旦下車したあと、再び改札の中に入って移動を続行するには、その乗車券の有効期間内であることが必要です。

片道乗車券の有効期間は100kmまで1日、200kmまで2日、それ以後は200kmごとに1日追加されます(したがって例えば東京から大阪までの片道乗車券は、556.4kmなので、4日間有効です)。

往復乗車券の有効期間は、片道乗車券の2倍です。

また、移動の途中で乗車券の有効期間が切れても、途中下車をしなければ着駅まで行くことができます。

できれば乗車券をひとつづきにさせたいが、自分の予定と有効期間の関係でできないというような場合に、有効期間を無理矢理伸ばす方法も存在しますが、説明が入り組みますので今回は省きます。

最後に

JRの旅客営業規則はとても複雑です。
しかし、その中にはうまく使うと、トクトクきっぷの類を使わなくてもとてもお得になるような規則も存在します。
また、無理矢理一筆書きの乗車券にしてしまうだとかの工夫の余地もたくさん存在します。
ぜひこの乗車券パズルを楽しんでみてください。

*1:回数券や定期券以外の乗車券のことで、片道乗車券、往復乗車券、連続乗車券の3種があります。連続乗車券はあまり一般的ではないので、この記事では触れないことにします。

*2:じゃあできるだけ新幹線経由にしたほうがいいじゃんと思うかもしれませんが、大都市近郊区間内相互発着だと乗車券の経由によらず一番便利な経路で乗車することができるというメリットがあります。